遅くなりましたが、先日図書館で借りてきた「フィリピンパブ嬢の社会学」の読書感想を書きます。
フィリピン人の出稼ぎ労働者は、2004年までは興行ビザで来日していました。
現地で歌やダンスのオーディションが行われ、日本のプロモーターが選別していたそうだ。
日本へ行けば生活が楽になるからと、オーディションを受けに沢山の人が来たとか。
大体、300人のうち10人ぐらいしか合格しなかったようだ。
そのために、皆が歌やダンスを猛特訓してオーディションに臨んだそうです。
…が、興行ビザで来日しても実際は、ヤクザに売られてホステスや風俗業で客を取らされること
が多く、人身売買の温床になっていると、興行ビザは2005年に規制されました。
そのために日本へ入国するのが難しくなり、てっとり早く入国させるために、「偽装結婚」という手
段を取るそうだ。
この本に出てくるミカは、3年間という契約で偽装結婚して来日する。
名古屋のフィリピンパブに勤めるが、給料はピンハネされ、月給6万円で休みは月に2回、狭い
アパートに数人で住まわされる。
著者の中島氏はフィリピンに取材に行き、現地の人の声を聞いて回る。
「フィリピン人(男)は、なぜ昼から仕事もせずに酒を飲んでいて平気なのか? 頑張って金を
稼ごうと思わないのはなぜなのか?」
滞在先で知り合い、仲良くなったカイルという青年に聞いてみた。
「これはフィリピンスタイルなんだ。 フィリピンには仕事が無いんだ。 だから人は皆貧しいし、
生活も苦しい。 ただ心だけはいつも幸せなんだ。 何をしても笑っていれば幸せだろ。」
…と答えが返ってきた。
その後、ミカは契約が切れる前に離婚させられる。
これは新しいフィリピン嬢を来日させるため、再婚しないといけないからだ。
強制送還されるかも?…と怯えるミカ。
しかし、フリーのホステスになったミカは月収30万~40万円を稼ぎだすことになる。
祖国にいる家族への仕送り額を増やした。
ミカが里帰りすると、実家に親戚中が待ち構えている。
その数50人にも上る。
一人一人に小遣いを渡す。
母親は「ショッピングセンターに行くからお金をちょうだい」と毎日言う。
姉は「買いたい物が有るから、ショッピングセンターに行こう」と、ミカに払わせる。
ミカは日本に帰る前に手持ちの金が尽きてしまう。
姉に「息子が歯医者に行きたいと言ってるから、歯医者代をちょうだい」と言われ、「もうお金が
無いから出せない」と言うと、「なんで払えないの? 私たち家族が病気になっていると言うのに
助けてくれないの? 私は誰に助けを求めればいいの?」と、ののしられる。
毎月欠かさず送金し、自分の生活よりもフィリピンへの送金を優先した。
それなのに、本当に金が無いというのに、人でなしのように言われる。
ミカと結婚した中島氏は、↑この件について以前仲良くなったカイル(今はフィリピンからオース
トラリアに出稼ぎに行っている)に意見を聞いてみた。
カイルは「フィリピンの家族は、僕たちが金持ちの国で沢山稼いでいると思ってるから、いくら
でも金を送ってもらえると思っている。そうじゃ無いなんて、いくら説明しても無理だよ」と言う。
それにしても、ミカの父親の本妻の息子の学費や、ミカの母親が今付き合っている彼氏の借金
までも、払うように言われるのは…。
毎月の仕送りは13万円だ。(月収は30万円)
その他に、次女の子供の学費、親戚の子供の学費、母の病院代など、突発的にねだられる。
この本のあとがきに、ジャーナリストの松本仁一さんが書かれてました。
「フィリピンでは日本人は全て金持ちと見なされる。いくら金を無心してもいい存在なのだ」
↑これが真実でしょうね。
家族を助けるために、自分の生活を犠牲にしても仕送りを続ける。
家族なのだから助けるのは当たり前。
だけど、自分が家族を持ったら、自分の生活を一番に考えないと…。
生活を犠牲にしてまで仕送りするのはおかしいです。
親は働いて、足りない部分を仕送りしてもらうなら良いですが、仕送りを当てにして、全く働か
ないのは、親として最低だと思います。
国民性とは言え、娘にたかって生活するのは人間のクズです。
「打ち出の小槌」じゃあるまいし、小槌を振れば金が湧いて出てくるわけでは無い。
腹立たしく思いながら、一気に本を読んだ私である。